はじめに

テグシスでは、計算化学や材料科学の分野で活用される「Gaussian」「TURBOMOLE」などの専門ソフトに対応したPCを数多くご提案しています。

今回は、とある研究機関のお客様とのやり取りをご紹介します。
テーマは、「新しい計算ソフト導入に向けたPC選定の相談」。
実際のメールのやりとりをベースに、ご相談から導入までの流れをお見せします。

ご相談

お客様
新しく『Reaction plus pro2』というソフトを使い始めたいのですが、Gaussian上で動かすことになります。
既存ワークステーションを用いたトライアルでは、計算が完了するまでに約1週間程度かかりました。

既存マシンのスペック

CPU Ryzen 9 7950X (16コア)
メモリ 128GB
ストレージ SSD+HDD
GPU NVIDIA RTX A1000 8GB

PCアイコン

そこで、それと同程度か、もう少し上のスペックのマシンを導入したいです。ただ、ソフトを販売している会社が紹介してくれたPC (Xeon搭載モデル) は、スペック的にあまり高くなさそうで不安です。 関連して、以下の点も気になります。

  1. CPUにXeonを採用する場合、既存ワークステーションより処理性能が下がる可能性はありますか?
  2. 既存機と同スペックのモデルは提案してもらうことはできますか?
  3. より高性能で、100万円以内に収まる構成はありますか?
TEGSYS
ご相談ありがとうございます。さっそく1つずつ回答いたします。

ご質問への回答

TEGSYS

Xeonモデルの性能について

ご指摘のとおり、Xeonを採用する場合は、お客様が現在ご利用のワークステーションと比較して、処理性能が下がる可能性があります。
特に問題となるのはCPUで、搭載コア数が少ないため、Gaussian等のCPU依存型ソフトでは負荷が集中し、処理速度が遅くなるケースが想定されます。
CPUの処理性能を優先する場合には、他のCPUも候補に入れて考えるのがよさそうです。

既存PCと同等スペックの構成

今回の条件でXeonよりも高い処理性能が期待できる構成として、以下の「構成案 A1」と「構成案A2」をご用意しました。

構成案 A1

  • CPU:Ryzen 9 9950X (16コア)
  • メモリ:128GB
  • GPU:NVIDIA RTX A1000
    (8GB、描画用)

構成案 A2

  • CPU:Ryzen 9 9950X (16コア)
  • メモリ:192GB
  • GPU:NVIDIA RTX A1000
    (8GB、描画用)

この構成であれば、既存機と同等以上の処理性能が期待できます。

より高スペックで100万円以内の構成

予算内で可能な範囲で、CPUを Ryzen Threadripper 7960X (24コア) にアップグレードした構成もご用意しました。

メモリは128GBで、GPUは NVIDIA RTX A400 (4GB) と、描画スペックをやや抑えた構成です。

構成案 Threadripper仕様

  • CPU:Ryzen Threadripper 7960X (24コア)
  • メモリ:128GB
  • GPU:NVIDIA RTX A400
    (4GB、描画用)

計算速度はCPU性能に大きく左右されるため、こちらの方が処理は速くなります。

お客様
ありがとうございます。スペック違いでの見積もりは検討しやすくて助かります。

構成内容の調整を相談

お客様

Threadripper構成には惹かれますが、予算的に厳しいため、構成案 A1とA2で調整したいです。私の用途ではGaussianやTURBOMOLEが中心で、GPUは基本的に描画しか使わないと思っています。

そこで、GPUをA400に落とした上で、コストを抑えつつ処理能力を維持できる構成はありませんか?

TEGSYS
はい、Ryzen 9 9950XベースのA2構成をベースに、GPUを NVIDIA RTX A400 (4GB) に変更した新しい構成 (構成案 A3) をご提案します。

構成案 A3

  • CPU:Ryzen 9 9950X (16コア)
  • メモリ:192GB
  • GPU:NVIDIA RTX A400
    (4GB、描画用)

なお、GPU変更によるWindowsのシステム要件への影響はほとんどなく、描画用途でも十分な性能を持つモデルです。

GaussianやTURBOMOLEの解析では、ユーザー様のご認識の通り、CPU+メモリ構成が処理速度の鍵となるため、GPUは計算処理には関与いたしません。
ただし,GPUは描画速度に影響するため、A400とA1000では操作時の表示速度やカクつきなどの差が出る可能性があります。

描画の快適さも重視したいというご相談

お客様

計算結果の解析速度を速めるという観点で考えた場合、GPUにA400とA1000のどちらを選択するのが良いでしょうか。

 

TEGSYS
GPUは計算結果を2D・3Dモデルで描画する際の速度に関わるため描画するモデルの規模が大きくなるほど、GPUの性能差で明確に表れます。
以前ご購入いただいたマシンにはRTX T1000が搭載されておりますが、計算結果の描画時に、描画速度の遅さやカクつきを感じられる場合は、後継機であるRTX A1000のご搭載をおすすめいたします。
また、 RTX A400では、RTX T1000と比較しGPU性能差(特にVRAM容量の部分)で描画速度が劣る可能性がございます。そのため、T1000で快適にご使用いただけていた場合も、同等以上のスペックを持つRTX A1000の搭載をおすすめいたします。

お客様

現在、RTX T1000でちょうど良く、これ以上は遅くしたくないという状況でした。
それではGPUはRTX A1000を搭載した構成で検討を進めたいと思います。

この結果、構成案 A2 (Ryzen 9 + メモリ192GB + A1000) で最終決定となりました。

PC納品後のご案内と運用サポート

TEGSYS
 今回のPCは性能を最大限引き出すため、水冷クーラーをPWMモードに設定しています。負荷時にはファン音が大きくなる可能性がありますが、これは冷却性能を確保するためです。 もし音が気になる場合は、Autoモードに切り替えていただくことで静音化も可能です (ただし温度は少し上がります) 。
お客様
ありがとうございます。実際に使ってみてファン音が気になるか確認しながら検討します。

PWMモードとは

PWMモード (Pluse Width Modulationモード) は、電子機器や制御システムで広く使われる「パルス幅変調」を利用した制御方式です。PCや産業用機器のファン制御などで利用され、必要な時だけファンを高速回転させて冷却性能を上げたり、負荷が低いときは回転数を落として静音性や省エネ効果を高める働きがあります。

Autoモードとは

水冷ファンやポンプの動作を自動的に制御し、CPUの温度やシステムの負荷状況に応じて最適な冷却性能と静音性のバランスを取る運転モードです。手動でファンやポンプの速度を調整する必要がなく、初心者でも安心して使えるほか、静音性と冷却性能を両立することができます。

7. 実際に使ってみて

お客様

さっそく使用しましたが、やはり前より明らかに計算速度が上がっていました。
メモリ192GBは正解でしたね。
ファンの音は思ったより大きいですが、計算機としての性能を優先したいので、しばらくこのまま使ってみようと思います。

おわりに

今回のご相談を通して、お客様の「実際の用途・環境・優先順位」をしっかり理解したうえでの構成提案が重要であることを、改めて感じました。

GaussianやTURBOMOLEのようなソフトでは、CPU性能とメモリ容量がボトルネックになりがち。
一方で、描画を快適に行いたい場合はGPU性能も一定以上を確保する必要があります。

テグシスでは、こうした計算用途に特化したPC構成を、お客様とのコミュニケーションを通じて最適化し、ご提案します。

導入構成まとめ (最終決定)

CPU Ryzen 9 9950X (16コア)
メモリ 192GB
ストレージ SSD+HDD
GPU NVIDIA RTX A1000 8GB
水冷方式 水冷 (PWMモード)

PC導入をご検討中の方は、お気軽にご相談ください。
「ソフトに最適な構成が知りたい」「限られた予算で最大限の性能が欲しい」といったご相談、大歓迎です。