GPGPU向けUbuntu設定ガイド|GPUを計算専用に最適化する方法

はじめに
近年、GPUによる大規模計算 (GPGPU) が研究・開発の現場で広く利用されています。
しかし、ワークステーションではディスプレイの描画処理にもGPUリソースが割り当てられるため、計算性能を十分に発揮できないことがあります。
この記事では、Ubuntu環境でGPUを計算専用として最適化する設定方法をご紹介します。
手順
3.1 作業前の諸注意
以下の手順は、GPUの動作設定やドライバ構成に関わる内容を含みます。
実行環境によっては、設定変更により映像出力やドライバ挙動が変化する場合があります。
手順に進む前に、以下の注意事項をご確認ください。
- 実行前にオンボードVGAによる映像出力が有効であることをご確認ください。
構成によっては、GPUを無効化すると画面出力が行えなくなります。 - 本記事に掲載のシェルコマンドは、Web上での不正実行を防止する目的で一部改変 (不可視文字の挿入) を行っています。
コマンドを実行される際は、エディタ等で内容を確認・整形のうえ、誤りのない形式で使用してください。
3.2 Nouveauドライバの無効化
Ubuntuでは、初期状態で「nouveau」ドライバが有効のため、NVIDIA公式ドライバと競合します。
はじめに下記の手順でnouveauドライバの無効化を行います。
1.nouveauの設定ファイルを新規作成し、ファイルに下記の内容を記入します。
options nouveau modeset=0
2.設定を反映させるため、initramfsを更新し、再起動します。
sudo reboot
3.3 NVIDIA公式ドライバインストーラのダウンロード
NVIDIAの公式サイトから、GPUに対応したLinux用ドライバ (.run形式) をダウンロードします。
参考:NVIDIAドライバダウンロードページ https://www.nvidia.com/ja-jp/drivers/
ダウンロード後、ファイルに実行権限を付与します。
3.4 ランレベルの変更
GUI (デスクトップ環境) が動作している状態では、NVIDIAドライバを正しくインストールできません。
そのため、以下のコマンドでCLIモード (CUI) に切り替えます。
この操作により、GUIが停止し、コマンドライン環境のみになります。
3.5 ドライバのインストール
以下のコマンドを実行して、OpenGL関連ファイルを除外した状態でドライバをインストールします。
–no-opengl-files –no-libglx-indirect –dkms
各オプションの意味は次のとおりです。
オプション | 説明 |
---|---|
--no-opengl-files |
OpenGL関連のライブラリをインストール対象から除外します。 |
--no-libglx-indirect |
GLX間接レンダリングを無効化し、描画処理をGPUに割り当てません。 |
--dkms |
DKMS (Dynamic Kernel Module Support) を利用して、カーネル更新時も自動で再ビルドします。 |
インストールが完了したら、システムを再起動します。
3.6 動作確認
再起動後、以下のコマンドでドライバが正常にインストールされているか確認します。
GPU名やドライババージョン、CUDAバージョンなどが正しく表示されれば、インストールは成功です。
※CUDAを利用する場合は、別途CUDA Toolkitのインストールが必要です。
まとめ
この手順を実施することで、Ubuntu環境においてGPUをディスプレイ出力から切り離し、計算専用として運用する構成を構築できます。
計算リソースを有効活用しながら、効率的で再現性の高い実行環境を整える一助として、ぜひ活用してください。
「こんな運用をしてみたいけれど、どんな構成が良いんだろう?」
GPU設定やワークステーション構成の最適化をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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