自律移動ロボット、ドローン、産業用ロボットなど、次世代ロボティクスの研究に欠かせない「ROS2」。
その導入には、適切な環境構築とハードウェア選定が不可欠です。
このページでは、ROS2の基礎から、研究に適したワークステーションの選び方までをわかりやすく解説します。

ROS2とは?特徴と導入メリット

なぜ今、ROS2なのか?

ROS (Robot Operating System) は、ロボット開発のためのオープンソースミドルウェアとして広く使われてきました。
その進化版である「ROS2」は、以下のような特徴を持ち、研究・産業の現場で急速に普及しています

  • リアルタイム通信:DDS (Data Distribution Service) による高信頼・高性能な通信
  • 分散処理対応:複数デバイス間での柔軟な連携が可能
  • モジュール設計:再利用性が高く、開発効率が向上
  • ROS1との違い:アーキテクチャの刷新により、より実践的な開発が可能に

ROS2は、単なるバージョンアップではなく、次世代ロボティクスの基盤技術として位置づけられています。

どんな研究に使えるのか?

ROS2は、以下のような研究分野で活用されています。

  • 自律移動ロボット:センサーデータを統合し、環境認識と経路計画を実現
  • ドローン制御:リアルタイム通信による安定した飛行制御
  • 産業用ロボット:分散処理による複数アームの協調動作
  • 教育・シミュレーション:仮想環境でのアルゴリズム検証

研究の初期段階から、実機制御まで、ROS2は幅広く対応可能です。

ROS2対応シミュレーター比較:Gazebo vs Isaac SIM

GazeboとIsaac SIM、どちらを使うべき?

ROS2を活用する研究では、実機制御だけでなく、仮想環境での検証・開発が重要なステップとなります。
そのため、多くの研究者がシミュレーション環境を併用しており、代表的な選択肢が「Gazebo」と「Isaac SIM」です。

なぜシミュレーション環境が重要なのか?

  • 安全性と効率性:実機を使わずにアルゴリズムの検証が可能
  • 再現性の高いテスト:同じ条件で繰り返し実験できる
  • 環境構築との連動:使用するシミュレーターによって、必要なハードウェア構成が大きく変わる
ROS2は、こうした仮想環境との連携を前提に設計されており、シミュレーション環境の選定はワークステーション選びに直結します。

Gazeboとは?

Gazeboは、ROS公式が長年サポートしてきたオープンソースのロボットシミュレーターです。
  • ROS2との親和性が非常に高く、公式チュートリアルやサンプルコードが豊富
  • 軽量で導入しやすく、教育・研究用途に広く採用
  • 物理エンジン (ODE、Bulletなど) を使った基本的な動作検証に適しており、自律移動ロボットの経路計画やセンサー連携の初期検証に最適
Gazeboは、ROS2の学習やプロトタイピングにおいて、最も手軽で実用的な選択肢です。

Isaac SIMとは?

Isaac SIMは、NVIDIAが提供する高精度な物理シミュレーション環境で、産業用途や高度な研究に対応しています。
  • GPUベースのレンダリングと物理演算により、リアルな環境再現が可能
  • ROS2との連携も可能で、ROS2 Bridgeを通じて双方向通信が実現
  • LiDARやカメラなどのセンサーシミュレーションが高精度で行えるため、自律走行車両やドローンの研究に適している
  • 導入には高性能なGPU (NVIDIA RTXシリーズなど) が必要で、ワークステーションの構成に大きな影響を与える
Isaac SIMは、実環境に近い条件での検証を求める研究者にとって強力なツールです。
Isaac SIMに最適なワークステーション選定ガイド

 

比較表

項目

Gazebo

Isaac SIM

提供元

Open Robotics

NVIDIA

ROS2連携

ブリッジ (ros_gz, ros_ign_bridge) 等を活用して標準対応

標準で「ROS2 Bridge」Extensionを搭載、ノード連携可能

GPU依存

物理演算はCPUメイン、描画など一部GPU利用。高負荷時はGPU効果もあるが限定的

レイトレーシング等の物理ベースレンダリングはRTX系GPU必須。OmniverseベースのためGPUへの依存度が高い

導入難易度

OS (Linux) やROS2バージョンで相性あり。標準パッケージから導入可能で中〜やや難

インストールや拡張はGUIで管理可能だがGPUスペック等ハード条件が厳しくやや難〜難

主な用途

ロボット物理シミュレーション、研究・教育・プロトタイピング

AI・ロボット開発、合成データ生成、SILテスト、強化学習や高度な環境構築

どちらを選ぶべきか?

  • Gazebo:ROS2の基本を学びたい方、軽量な環境で始めたい方におすすめ
  • Isaac SIM:リアルな環境での検証が必要な方、GPU性能を活かしたい方に最適
選択するシミュレーション環境によって、必要なワークステーションのスペックが大きく変わるため、導入前に目的を明確にすることが重要です。

ROS2に最適なPCスペック・ワークステーション構成ガイド

研究・開発に必要なスペックと選定ポイント

ROS2 は、ロボット開発や自律移動システムの研究に広く使われているオープンソースミドルウェアです。
その導入には、用途に応じたワークステーションの選定が不可欠です。ここでは、ROS2に適したハードウェア構成と選び方のポイントを解説します。

ワークステーション選定の5つのポイント

OS ROS2はLinux環境 (特にUbuntu) が推奨されます。WindowsでもWSL2を使えば一部機能は動作しますが、制限があるため注意が必要です。
CPU ROS2は複数ノードの並列処理を行うため、マルチスレッド性能に優れたCPUが望まれます。Intel Core i7以上、またはAMD Ryzen 7以上が推奨されます。
GPU Gazeboのみを使用する場合はGPU依存度は低いですが、Isaac SIMなどの高精度シミュレーション環境を使う場合は、NVIDIA製GPUが必須です。RTX 30シリーズ以上が推奨されます。
RAM ROS2のビルドやシミュレーションには多くのメモリを使用します。最低16GB、可能であれば32GB以上を搭載することで、快適な開発環境が整います。
ストレージ 開発環境の構築やビルド時間に影響するため、高速なSSD (NVMe) の採用が推奨されます。容量は最低500GB以上が望ましいです。

構成例 (用途別)

用途 推奨構成 特徴
ROS2の学習・開発 Intel Core i5 / 16GB RAM / SSD / Ubuntu 初学者向け。Gazebo中心の軽量構成
実機制御・研究用途 Intel Core i7以上 / 32GB RAM / SSD / Ubuntu 複数ノード・センサー連携に対応
Isaac SIM対応構成 Intel Core i9 / 64GB RAM / RTX 3080以上 / Ubuntu or Windows (WSL2) 高精度シミュレーションに最適。GPU性能が重要

※上記はあくまで目安です。研究テーマや使用するROS2パッケージ、シミュレーション環境により最適な構成は異なります。

過去の提案事例

事例No.PC-TE1J252544
Gazebo・ROS2対応リモート作業向けワークステーション

CPU AMD EPYC 9354 3.25GHz 32C/64T
メモリ 合計256GB DDR5 5600 REG ECC 32GB x 8
GPU NVIDIA RTX4000 Ada 20GB (DisplayPort x4)
ストレージ 2TB SSD M.2 NVMe Gen4 + 4TB HDD S-ATA
電源 ミドルタワー型筐体+1500W 80PLUS PLATINUM1000W 80PLUS PLATINUM
OS Ubuntu 24.04

GazeboシミュレータとROS2を使用して重機モデルを作成するためのワークステーション構成例です。
複数ユーザーによる同時作業を想定し、並列処理性能に優れたEPYC 9354(32コア)を選定しました。

Gazebo・ROS2対応リモート作業向けワークステーションの詳細を見る

ROS2導入前によくある質問と回答(FAQ)

ROS2導入前に知っておきたい、よくある疑問にお答えします


Q1. ROS2はWindowsでも使えますか?

A. はい、一部機能はWindowsでも使用可能ですが、基本的にはLinux環境 (Ubuntuなど) が推奨されます。
Windows上でROS2を動かすには、WSL2 (Windows Subsystem for Linux) を利用する方法があります。ただし、全てのパッケージが安定して動作するわけではなく、開発や検証の効率を考えると、Linuxネイティブ環境の方が適しています。

Q2. GazeboとIsaac SIM、どちらを選べばいいですか?

A. 学習・検証中心ならGazebo、高精度な環境再現が必要ならIsaac SIMがおすすめです。
Gazeboは軽量で導入しやすく、ROS2との統合も進んでいるため、初学者や教育用途に最適です。一方、Isaac SIMはNVIDIAが提供する高精度な物理シミュレーション環境で、GPU性能を活かしたリアルな環境再現が可能です。


Q3. ROS2を使うにはGPUは必須ですか?

A. 使用するシミュレーション環境によって異なります。Gazeboのみなら不要ですが、Isaac SIMや画像処理を行う場合はGPUが必須です。
Isaac SIMはGPUベースで動作するため、NVIDIA製のRTXシリーズなどを搭載したワークステーションが必要です。画像認識や深層学習を併用する場合も、GPUの有無がパフォーマンスに大きく影響します。

Q4. ROS2の環境構築は難しいですか?

A. 初学者にはやや難易度が高いため、構築支援や相談窓口の活用がおすすめです。
ROS2は依存関係が多く、OSやバージョンによって動作が異なるため、環境構築に時間がかかることがあります。特にGazeboやIsaac SIMとの連携を行う場合は、ハードウェア構成やドライバの整合性も重要です。
テガラでは、ROS2導入に関するご相談を受け付けております。お気軽にお問い合わせください。

環境構築のご相談はお気軽に!

研究に集中するための「ROS2導入相談窓口」

ROS2の導入やワークステーション選定に関して、
「どんな構成が自分の研究に合っているのか分からない」
「GazeboやIsaac SIMを使いたいが、環境構築が不安」
そんなお悩みをお持ちの方へ。
テグシスでは、研究者・技術者の皆様が本来の研究に集中できるよう、ROS2に関する環境構築やハードウェア選定のご相談を無料で承っております。

 お問い合わせォームでできること

以下の項目をご記入いただくだけで、専門スタッフが最適な構成をご提案します
  • 研究テーマ (例:自律移動ロボットの経路計画)
  • 使用予定ソフト (Gazebo / Isaac SIM / その他ROS2関連ツール)
  • 現在の環境 (OS、PCスペック、GPUの有無など)
  • ご質問内容 (導入に関する不安点、構成の比較検討など)

よくある相談内容 

  • 「Isaac SIMを使いたいが、GPUはどれくらい必要?」
  • 「ROS2をWindows環境で使うにはどうすればいい?」
  • 「Gazeboでのシミュレーションが重い。スペック不足?」
  • 「研究室で複数台導入したいが、構成を統一すべき?」

テガラが選ばれる理由

  • 技術系研究者・開発者向けの豊富な導入支援実績
  • ROS2 / Gazebo / Isaac SIMに関する動作検証・構成提案のノウハウ
  • 導入後も安心の技術サポート体制

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