UnityやUnreal Engineを活用した物理シミュレーションを用いた研究開発は、研究・教育・産業分野でますます重要性を増しています。
これらの3Dエンジンは、リアルタイムでの挙動再現や複雑な物理演算を可能にする強力なツールですが、性能を最大限に引き出すには、適切なPC構成=ワークステーション選びが不可欠です。
このページでは、UnityやUnreal Engineを用いた物理シミュレーションにおいて、どのようなPCスペックが求められるのか、代表的なシミュレーション例とともに詳しく解説します。
また、研究スタイルに応じた構成選定のポイントや、導入事例もご紹介しています。
なぜ「ワークステーション選び」が研究の質を左右するのか?
物理シミュレーションの研究では、UnityやUnreal Engineといった3Dエンジンが活用されるケースが増えています。これらのツールは、リアルタイムでの挙動再現や複雑な物理演算を可能にし、研究の可視化・検証・教育応用において非常に有効です。
Unityとは? (クリックで表示)
Unityは、世界中の開発者・研究者に利用されているリアルタイム3D開発プラットフォームです。もともとはゲーム開発向けに設計されたツールですが、現在では以下のような分野でも広く活用されています。
- 物理シミュレーション (剛体・柔軟体・流体など)
- ロボティクス・制御系の検証
- 教育・トレーニング用のインタラクティブ教材
- 医療・建築・自動車などの産業用途
Unityの特徴は、リアルタイム性・拡張性・クロスプラットフォーム対応に優れている点です。研究用途では、物理演算エンジン (PhysX) やスクリプト制御 (C#) を活用し、複雑な現象を視覚的かつ定量的に再現できます。
参考:Unity のリアルタイム開発プラットフォーム | 2D/3D、VR/AR エンジン
参考:Unity Pro / Enterprise / Industry | ゲーム制作 統合開発環境 | 海外ソフトウェアの購入ならUNIPOS(ユニポス)
Unreal Engineとは? (クリックで表示)
Unreal Engineは、Epic Gamesが開発した高精度・高表現力のリアルタイム3Dエンジンです。映画・ゲーム業界での活用が有名ですが、近年では以下のような研究・産業分野でも注目されています。
- 高精度な物理シミュレーション (Chaos Physics)
- デジタルツイン・産業設計・建築ビジュアライゼーション
- 医療・自動車・航空分野でのリアルタイム検証
- VR/ARを活用したインタラクティブ研究環境
Unreal Engineの強みは、フォトリアルな描画性能と高度な物理演算機能です。特にChaos Physicsによる剛体・柔軟体・破壊表現は、研究用途でもリアルな挙動再現に貢献します。
ただし、動作環境はWindowsが推奨されており、Macでは一部機能に制限があるため、研究用途ではWindowsベースのワークステーションが主流です。
しかし、UnityやUnreal Engineを本格的に活用するには、一般的なPCでは処理能力が不足することが多く、研究内容に応じたワークステーション構成の検討が不可欠です。
物理シミュレーション研究において、使用するPCの性能は単なる作業効率の問題ではありません。それは、研究そのものの精度・再現性・スピードに直結する「研究基盤」です。
例えば、UnityやUnreal Engineを用いたシミュレーションでは、以下のような処理が求められます。
- 複雑な力学計算 (ニュートン力学、拘束条件、衝突判定など)
- リアルタイムの3D描画と物理演算
- 複数オブジェクトの同時処理と挙動制御
これらは、GPU・CPU・メモリ・ストレージの性能がボトルネックになることが多く、スペック不足のPCでは以下のような問題が発生します。
- シミュレーションの遅延やクラッシュ
- 描画のカクつきによる検証精度の低下
- 複数条件の比較検証に時間がかかり、研究の進捗が停滞
つまり、「なんとなく高スペックなPC」ではなく、UnityやUnreal Engineで行うシミュレーションの内容に合わせて、最適な構成を選ぶことが、成果の質とスピードを左右します。
UnityやUnreal Engineで物理シミュレーションを行うには、どんなPCスペックが必要?
UnityやUnreal Engineは、ゲーム開発だけでなく、物理シミュレーションや教育・研究用途にも広く使われている強力な3Dエンジンです。
しかし、これらのツールを本格的に活用するには、一般的なノートPCでは力不足。特に、粒子物理や流体力学などの計算負荷が高いシミュレーションを行う場合は、専用のワークステーションが必要になります。
以下では、UnityやUnreal Engineを使った物理シミュレーションに適したPCスペックを、初心者にもわかりやすく解説します。
UnityとUnreal Enginのシステム要件
参考:Unreal Engine のハードウェアおよびソフトウェアの仕様 | Unreal Engine 5.6 ドキュメンテーション | Epic Developer Community
シミュレーション別の選定ポイント
UnityやUnreal Engineを用いた物理シミュレーションでは、処理内容によってPCへの負荷が大きく異なります。 単純な運動であれば一般的なPCでも対応可能ですが、複雑な高速計算やリアルタイム描画が求められる場合は、ハイエンドなワークステーションが不可欠です。 ここでは、代表的なシミュレーションごとに、推奨されるPCスペックの目安をご紹介します。
実際の研究に適したスペックは、研究の目的や規模、リアルタイム性の要件によって必要な構成は大きく異なるため、あくまで参考情報としてご覧ください。
最適な構成については、個別の研究内容に応じたヒアリングを通じてご提案いたします。
自由落下・弾性運動 (クリックで表示)
目的: 重力と反発力の基本挙動を検証
処理内容: 物体が落下し、床に衝突して跳ね返る動きを再現。速度・位置は力の積分で更新。
技術ポイント: 摩擦係数や反発係数の調整により、現実に近い挙動を再現可能。
推奨スペック: 処理負荷は比較的軽めですが、研究用途での安定性と拡張性を考慮すると、CPU:Core i7以上、メモリ:16GB以上、GPU:RTX A2000以上の構成が望ましいです。
振り子運動 (クリックで表示)
目的: 周期運動の解析とエネルギー保存則の検証
処理内容: 紐に吊るされた重りの角度と速度を運動方程式で計算。
技術ポイント: 時間刻み積分による安定した物理演算が求められます。
推奨スペック: 処理負荷は低めですが、研究環境での再現性と長時間運用を考慮し、CPU:Core i7以上、メモリ:16GB以上、GPU:RTX 3050以上を推奨します。
車輪付きロボットの動き (クリックで表示)
目的: 地面との摩擦・加速度・制御アルゴリズムの検証
処理内容: 四輪駆動ロボットのタイヤ回転と移動を物理ベースで表現。
技術ポイント: リアルタイム性が高く、CPU・GPU負荷が大きいため、スペック選定が研究の安定性に直結します。
推奨スペック: CPU:Core i9以上 (高クロック・マルチコア) 、メモリ:32GB以上、GPU:RTX 4070以上の構成が推奨されます。
玩具や遊具の動作 (クリックで表示)
目的: てこの原理や重量バランスの理解・教育用途
処理内容: シーソーなどの遊具が回転・傾斜する動きを再現。
技術ポイント: 回転中心の設定や質量分布の調整が精度に影響します。
推奨スペック: 処理負荷は中程度ですが、教育・研究用途では安定性が重要です。CPU:Core i7以上、メモリ:16GB以上、GPU:RTX 3060以上が望ましいです。
衝突と反発 (クリックで表示)
目的: 衝突判定・反発力・摩擦による減衰の検証
処理内容: 物体同士や壁との衝突時の挙動をRigidBodyで制御。
技術ポイント: 多数の衝突判定が必要なため、処理負荷が高く、GPU性能が結果に影響します。
推奨スペック: 高負荷が予想されるため、CPU:Core i9以上 (8コア以上推奨) 、メモリ:32〜64GB、GPU:RTX 4080以上の構成が推奨されます。
Position-Based Dynamics (PBD) (クリックで表示)
目的: 布・紐・柔軟物体の挙動再現
処理内容: 複数の質点を拘束条件で制御し、柔軟な動きを再現。
技術ポイント: 拘束解決アルゴリズムが複雑で、メモリ・GPUともに高性能が求められます。
推奨スペック: 非常に高負荷な処理となるため、CPU:Core i9以上、メモリ:64GB以上、GPU:RTX 4090などのハイエンドモデルが望ましいです。研究の規模やリアルタイム性の要件に応じて、さらに上位構成が必要になる場合もあります。
簡単なシミュレーションから複雑でリアルタイム性が要求されるものまで負荷に応じてPCスペックが変わるため、用途に合わせた高性能CPU・GPU・十分なメモリ搭載が必要です。
シミュレーション | CPU | メモリ | GPU |
---|---|---|---|
自由落下・弾性運動 | Core i7以上 | 16GB以上 | RTX A2000以上 |
振り子運動 | Core i7以上 | 16GB以上 | RTX 3050以上 |
車輪付きロボット | Core i9以上 | 32GB以上 | RTX 4070以上 |
玩具・遊具 | Core i7以上 | 16GB以上 | RTX 3060以上 |
衝突と反発 | Core i9以上 (8コア以上推奨) | 32〜64GB | RTX 4080以上 |
Position-Based Dynamics (PBD) | Core i9以上 | 64GB以上 | RTX 4090以上 |
物理シミュレーションに関連するPC提案事例
事例No.PC-TE1J252544 Gazebo・ROS2対応リモート作業向けワークステーション |
![]() |
事例No.PC-TS1J253718 RSoft DiffractMOD用ワークステーション |
![]() |
事例No.PC-ISEN2509 Isaac SIM用ワークステーション エントリー構成 (2025年9月版) |
![]() |
事例No.PC-OMST2509 Omniverse用ワークステーション スタンダード構成 (2025年9月版) |
![]() |
よくある質問とその答え
Q1. UnityやUnreal Engineは、GPUがないと動かないのですか?
UnityやUnreal Engineは、GPUなしでも起動・動作はします。ただし、リアルタイム描画や複雑な物理演算を行う場合、GPUの性能が処理速度・描画品質・安定性に直結します。
特に研究用途では、RTXシリーズ以上のGPUを推奨します。GPUが非搭載または性能不足の場合、シミュレーションの遅延やクラッシュが発生する可能性があります。
Q2. メモリはどれくらい必要ですか?
特に、流体力学・粒子シミュレーション・柔軟体の挙動再現 (PBDなど) では、数十GB単位のメモリを消費するケースも珍しくありません。
ただし、これはあくまで目安であり、実際の必要量は以下の要素によって変動します。
- 扱うオブジェクト数や粒子数
- シミュレーションのリアルタイム性
- 同時に開くプロジェクトやツールの数
- 将来的な拡張や複数条件の同時検証の有無
「今は32GBで足りていても、半年後には不足する」というケースもあるため、研究用途では余裕を持ったメモリ構成が安心です。
Q3. ストレージはHDDでも問題ありませんか?
HDDでも動作は可能ですが、読み込み・保存に時間がかかり、作業効率が大きく低下します。
特にUnityやUnreal Engineでは、プロジェクトファイルやアセットの読み込みが頻繁に発生するため、SSD (NVMe対応) を選ぶことで快適な作業環境が得られます。
Q4. Macでも使えますか?
UnityはmacOSでも問題なく動作しますが、Unreal EngineはWindows向けに最適化されており、一部機能やプラグインがMacでは制限される場合があります。
研究用途で安定性・拡張性を重視する場合は、Windowsベースのワークステーションをおすすめします。
Q5. 自分に合った構成が分からないのですが、相談できますか?
「どのスペックが必要か分からない」「将来的な拡張も考えたい」といったお悩みには、テグシスの技術スタッフが個別に対応いたします。
お気軽にご相談ください。
Q6.Unityのライセンスだけ購入できますか?
詳しくは、研究開発者向け海外製品調達・コンサルテーションサービス UNIPOS – ユニポスのページをご覧ください。
参考:Unity Pro / Enterprise / Industry | ゲーム制作 統合開発環境 | 海外ソフトウェアの購入ならUNIPOS(ユニポス)
まずは、自分の研究スタイルに合った構成を知ることから
「どんな構成が自分に合っているのか分からない」
「UnityやUnreal Engineに最適なスペックって?」
そんな疑問を持つ方は、決して少なくありません。
物理シミュレーションの研究は、扱う現象やリアルタイム性の要件によって、必要なPCスペックが大きく異なります。
例えば、振り子運動のような単純な周期運動と、PBD (Position-Based Dynamics) のような複雑な拘束計算では、求められる処理能力に数倍以上の差があることも。
だからこそ、「なんとなく高性能なPC」ではなく、「研究スタイルに最適化された構成」を選ぶことが、成果の質とスピードを左右します。
研究スタイルに合った構成選びのポイント
- 何をシミュレーションするのか? (例:剛体 vs 柔軟体、単体 vs 多体)
- リアルタイム性は必要か? (例:制御系 vs 記録系)
- 将来的に拡張する可能性は? (例:GPU追加、メモリ増設)
UnityやUnreal Engineだけじゃない。Omniverseという選択肢も
物理シミュレーションや3D可視化の研究環境は、UnityやUnreal Engineだけに限りません。
近年、NVIDIAが提供するOmniverseも、研究者・技術者の間で注目を集めています。
Omniverseとは?
NVIDIA Omniverseは、複数の3Dツールやシミュレーションエンジンを統合し、リアルタイムで共同作業・物理演算・AI連携が可能なプラットフォームです。
特に以下のような研究・開発用途に適しています。
- デジタルツインの構築と検証
- AI・ロボティクスとの連携シミュレーション
- 高精度な物理挙動の再現 (PhysX、Flex、Flowなど)
- USD (Universal Scene Description) ベースのデータ連携
Omniverseは、GPU性能を最大限に活かした分散型シミュレーション環境を提供し、複雑な研究プロジェクトにも対応可能です。
専門スタッフが、あなたの研究内容を丁寧にヒアリング
「自分に合った構成が分からない」という方には、テグシスの技術スタッフが研究内容を丁寧にヒアリングし、最適な構成をご提案します。
研究者・技術者の視点に立ったアドバイスで、スペック不足による失敗を防ぎコストパフォーマンスに優れたワークステーションをご提供します。
より詳しいことを相談したい方は、テグシスまでお気軽にご相談ください。
関連情報
物理シミュレーション用ワークステーション導入のご相談はお気軽に! 研究用・産業用PCの製作・販売サービス TEGSYS – テグシス |