電磁界解析向け マシン選定のポイント

電磁界解析とは

電磁界解析とは、電磁界の挙動をシミュレーションする手法で、主にEMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)の解析に用いられます。
EMCは、電子情報機器の高速化や製品サイクルの短期化によって重要性が増しており、設計段階からEMC対策を考慮する必要があります。

※EMC(Electromagnetic Compatibility:電磁両立性)
電子機器やシステムが電磁波の影響を受けずに正常に動作すること。周囲の電磁環境からの干渉を最小限にし、自らも他の機器に干渉を与えない設計が求められます。

電磁界解析にはさまざまな手法がありますが、代表例としてはモーメント法、有限要素法、有限差分時間領域法が挙げられます。
モーメント法は放射問題の解析に有効で、一様な誘電物質からなる構造のEMC解析に向いています。
有限要素法は不均質構造の解析に適しており、モーメント法ほど放射問題をモデル化できませんが、全面積をメッシュするため、広範な解析が可能です。
有限差分時間領域法は過渡解析に適しており、複雑な不均質構造のモデリングにも優れています。

電磁界解析の利点は、設計段階でEMC対策を行うことができる点です。シミュレータを用いて電磁界と対象物との相互作用を計算することで、放射エミッションやノイズ問題を事前に検討できるため、実際の試作品を作成する前に問題を発見し、改善することができます。

ただし、シミュレーションにも限界があり、解析対象の精密な電流分布を求めることが難しいため、一部の場合には実験結果との差異が生じることもあります。そのため、シミュレーションと実験を組み合わせることが重要です。

電子情報機器の高度化に伴い、電磁界解析はますます重要性を増しています。EMC対策を効果的に行い、製品の性能と信頼性を確保するために、電磁界解析を駆使した設計手法が更に発展すると考えられます。

手法 モーメント法(MoM) 有限要素法(FEM) 有限差分時間領域法(FDTD)
概要 電磁界解析の手法の一つで、物体の表面に分布する電流や電荷のモーメントを考慮して電磁場を解析する。 解析対象を要素に分割し、各要素内で電磁場の挙動を解析。不均質な構造や複雑な形状に適している。 解析空間を離散的な格子に分割し、時間領域でマックスウェル方程式を解析。過渡解析に優れている。
特徴

・放射問題の解析に優れている。

・完全導体と一様な誘電物質の解析にも適している。

・複雑な不均一な構造の解析には適さない。

・不均質な構造のモデリングに適している。

・モーメント法より計算コストが高くなる場合がある。

・計算リソースの制約がある場合、解析時間が長くなる。

・目的に応じて解析条件を柔軟に調整できる。

・時間領域での解析が可能で、過渡解析に適している。

・高い時間解像度で解析が行える。

・複雑な不均質構造のモデリングに非常に優れている。

使用される主要ソフトウェアと求められるPCスペック

実際の計算処理においては、特定のソフトウェアを利用することが考えられます。
以下はソフトウェアごとの動作スペックと推奨スペックをまとめた一覧です。情報は2023年8月時点の情報ですので、予めご承知おきください。

ソフトウェア名 動作スペック 推奨スペック
Ansys Electromagnetics Suite
(Ansys EMAG)
CPU: Intel Core i5以上、AMD Ryzen 5以上
メモリ: 16GB以上
GPU: NVIDIA QuadroまたはRTXシリーズ、またはAMD Radeon Proシリーズ
ストレージ: 256 GB以上の空き容量を持つSSD
CPU: Intel Core i7以上、AMD Ryzen 7以上
メモリ: 32GB以上
GPU: NVIDIA QuadroまたはRTXシリーズ、またはAMD Radeon Proシリーズ
ストレージ: 512 GB以上の空き容量を持つSSD
ANSYS Lumerical CPU: Intel Core i5またはAMD Ryzen 5以上
メモリ: 8GB以上
GPU: グラフィックスカードは必須ではないが、高性能なGPUがあるとシミュレーションのパフォーマンスが向上します
ストレージ: 200 GB以上の空き容量を持つSSD
CPU: Intel Core i7またはAMD Ryzen 7以上
メモリ: 16GB以上
GPU: NVIDIA RTXまたはAMD Radeon Proシリーズなどの高性能なGPU
ストレージ: 500 GB以上の空き容量を持つSSD
CST Studio Suite CPU: Intel Core i5または同等のプロセッサ
メモリ: 4GB以上
GPU: OpenGL互換
ストレージ: 30GB以上の空き容量
CPU: Intel Xeonプロセッサ
メモリ: 16GB以上
GPU: OpenGL互換の高性能ビデオカード
ストレージ: 100GB以上の空き容量
COMSOL Multiphysics

CPU: SSE4命令セットを持つIntelまたはAMDプロセッサ
メモリ: 最低4 GB以上
GPU: OpenGL 2.1以降に対応したビデオカード
ストレージ: 2–20 GB以上の空き容量

CPU: より高性能なIntelまたはAMDプロセッサ
メモリ: 8 GB以上
GPU: 2 GB以上のビデオメモリを持ちOpenGL 3.3以上に対応したビデオカード
ストレージ: 10 GB以上のディスク容量

Remcom XFdtd CPU: クアッドコア Intel Core i3 プロセッサ
メモリ: 8 GB RAM
GPU: NVIDIA CUDA 対応 GPU カード(Compute Capability 2.0 以上)
ストレージ: 250 GB の空き容量
CPU: クアッドコア Intel Core i7 またはデュアル Intel Xeon 8 コアプロセッサ
メモリ: 32 GB 以上 (64 GB 以上を推奨)
GPU: NVIDIA Tesla P100 以上を推奨 (NVIDIA Tesla V100を推奨)
ストレージ: 2 TB 以上 (5 TB 以上を推奨)

上記はあくまで目安としてのスペックです。実際の計算内容や各種条件によって必要なスペックは異なります。
ご自身の用途や条件に最適な構成をおしりになりたい場合には、ぜひお気軽にお問い合わせください。

テグシスの提案事例 -電磁界解析-

テグシスでは電磁界解析を用いた研究開発に携わるお客様へ、多数のPC構成をご提案した実績がございます。
以下はその代表的な事例ですが、WEBに掲載のない用途・構成でもお気軽にご相談ください。
長年の実績から、最適な構成をご提案します。

PC-10741
FDTD/FEM計算用マシン
予算50万円
有限要素法解析やFDTD解析を想定した構成例。Xeonを搭載し、メモリ容量も拡張性のある構成。
PC-11041
FDTD法/電磁界計算用マシン
予算60万円
Lumerical FDTDを利用するためのワークステーション。COMSOLでの電磁界計算も想定した予算60万円のローエンド構成。
PC-10072
COMSOL Multiphysics用マシン
予算70万円
イヤホンやヘッドホン開発での利用を想定したマシン構成。納期と安定性を重視したいというご要望に合わせて、納入実績が多く入手性の安定した構成をご提案。
PC-11021
電磁界シミュレーション用マシン
 予算150万円
電磁界シミュレーションソフト (CST Studio)の利用を想定した構成例。推奨の動作要件に合わせて、CPUは16コアのXeon。ご予算に合わせたGPUを選定。
PC-11063
CST Studio Suite用マシン
予算250万円
CST Studio Suiteを用いた電磁界解析用マシンの構成例。12コアのXeonを2基搭載した2CPU構成で、GPUにRTX A6000 Adaを採用。
PC-10986
電磁場解析と深層学習用マシン
予算310万円
Ansys Lumerical FDTDやRsoft Full Wave、MATLABなどの仕様を想定したマシン構成。
DeepLearningでの利用も想定し、RTX A6000を搭載している。